内観療法
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一日内観
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内観体験記
 

内観体験記
集中内観を体験して
三和中央病院 看護師 E.N.
 
 平成21年1月に三和中央病院に採用して頂き、新入職員のオリエンテーションで初めて内観療法のことを知りました。新人研修として翌日に一日内観研修を行うということで内観についての説明を受けました。過去のことを(特に幼少期)思い出せるのだろうかという不安と、どのように治療に効果があるのかという興味など様々な感情がありましたが、内観療法についての知識が全くなかったので先入観などはなく、当日はただ説明通りに「とにかくやってみよう」という感じで臨みました。
 
 母についての自分を幼少時から現在まで調べて感じたことは、今まで母を母としか見ていなかったということ。母に対し恨みを持っていたわけではありませんが、考え方が母とはあまり合わないと感じていたのです。でもそれは、母を母親のレッテルで見て、してもらえなかったことばかりにとらわれていた自分自身に問題がありました。母と合わない部分だけを見て生きてきた自分勝手さに気が付き、調べれば調べるほど母の愛情を感じました。
 
 一日の内観体験を終え、効果を実感し、もっと内観について勉強したいと思いました。上司に本を借りたり、研修に参加し体験発表を聞いたり講演を聞いたりするにつれ集中内観を体験したいという思いが強くなりました。仕事に役立てたいという思いももちろんありましたが、自分の心の中に蓋をして開けたくない過去がたくさんあり、それときちんと向き合いたいという気持ちがより強かったと思います。上申の結果、許可を頂き平成22年10月24日より31日までの7日間、多布施内観研修所で集中内観研修を受けさせて頂きました。
 
 母、父に対する自分を調べていく中で「して頂いたこと」はたくさんありました。数えきれないほどに愛情を持って大事に育てられてきたことを再確認しました。とても厳しく育てられたので「何で私だけ」とよく思っていましたが、仕事も手につかないくらいに心配をかけておいて、平気で「私だけ」という自己中心的な解釈をしてきた自分にも気づきました。幼少のころから両親は飲食店を経営していて、小学校に入学したころからよく手伝いをしていたので「して返したこと」はたくさんあると思っていました。しかし、改めて調べてみるといつも手伝いを頼まれると嫌な顔をしてふてくされてしており、家族のためにきつい思いをして朝から晩まで働いていた両親は子供のそんな表情を見て辛かっただろう「して返した」つもりが迷惑をかけていた、また手伝うことで料理を覚えていったと考えると「して頂いたこと」にもなる、そう考えると「して返したこと」は殆どありませんでした。
 
 母、父、離婚した夫について調べていくうちに蓋をしてきた事実がどのようなことかが分かってきました。それは、自分の汚い部分でした。何か自分に都合の悪いことが起こると「だって」「でも」「つもり」など言い訳ばかりを探して責任を周囲に押し付けるように行動してきた自分を認められなかったのです。「こんなに不幸なんだからこのくらいのことは許される」と自分を正当化するあまりに平気で周囲の人たちを傷つけていました。
 
 「ここまで汚かったんだ」と気づいたときは信じられない気持ちでしたが、すべて事実なので受け入れるしかありません。でも、こんなに汚い自分をたくさんの人が愛し、支えてくれていた(今も支え続けてくれている)ことも事実で、この感謝の気持ちをどうやって伝えたらいいのか、どうやってお返ししたらいいのか、早く帰って伝えたいと思うようになっていました。そう思うと子供たちは「どうしてるかなあ」と考え、少し集中できない時間もありましたがこれではいけないと自分に言い聞かせながら後半に入り子供、叔母、嘘と盗みについて調べていくうちに自己否定と感謝の気持ちを繰り返し、特に感謝はだんだんと深まっていったように思います。
 
 6日目、次は誰に対して調べていくか考えた結果、もう一度母に対する自分を調べてみることにしました。1回目より色々なことが思い出され、当時の情景まで鮮明になっていることに気づきました。小学校低学年の時、よく「あそこの家の子どもだったらよかったのに」と思うことがありました。自転車に乗ってその家に遊びに行きます。お菓子がたくさんあり、ゲームもあり、ビデオを見たり、楽しかったはずなのですがなぜかその家は真っ暗でした。自転車に乗り、両親の待つ当時の店に帰ります。店のドアを開けた瞬間、眩しいほどのオレンジの光の中に両親が立っていて「おかえり」と笑顔で迎えてくれました。そのとき心の底から「幸せだったんだ」と感じました。してもらえなかったこと、してあげたこと、迷惑をかけられたことばかり見ていて、こんな目の前の幸せに気が付けなかったんです。涙が溢れて止まりませんでした。
 
 集中内観終了後帰宅し、体験したこと、感謝の気持ちを両親に伝えました。あれほどお返ししたいと思って帰ってきたのに、して頂いたことが増えていく一方で全くお返しできていません。ですが、感謝の気持ちを素直に伝えられるようになり、家事をしながら、風呂に入りながら内観を行うことにより感情的になることが少なくなったせいか「内観に行って変わったね。良かったね」と母が一緒に喜んでくれています。
 
 仕事上の人間関係にも変化がありました。特に患者様との関わりの中で体験を共感しあうこと、共に内観することで信頼関係が築けるようになりました。スタッフとして援助する立場なのですが、逆に患者様に支えて頂き、人間として成長させてもらっていることに気づいたことが大きいと思います。このような前向きな気持ち(目標)を持ち、それを行動に移すことができているのも内観と出会ったおかげです。きっかけを下さった皆さんに本当に感謝しています。



内観体験記
内観を体験して
三和中央病院 作業療法士 D.T.
 
 私が内観に興味を持ち出したのは5年位前だったと思います。それまで入退院を数えきれないほど繰り返してきたアルコール依存症の患者様が、7年間断酒を継続されていたのです。きっかけは何だったのかを尋ねると「内観が良かったね。」と答えられました。退院をしてはすぐに再飲酒して病院に逆戻り。そんなことを何十回と繰り返してきた彼を変えた内観とはどんなものなのかとても興味深いものがありました。
 
 それから勉強会や学会に参加させてもらうようになって、内観がどういうものなのか、やり方、治療的効果など勉強することができました。患者様に内観を勧めてみたいとも思うようになりました。しかし、その中で先生方が「内観は勉強するものでなく、自分でやってみるものだ。」とよく話されているのを耳にしました。確かに勧めるにしても自分でやってみないことにはと思い、上司に相談し1週間の集中内観を体験することになりました。
 
 集中内観を体験して1週間つらく長いものでしたが、それ以上に得たものが多くて、やって良かったと思いました。つらく長く感じたのは時間ではなく、今まで自分がしてきたことを振り返る作業で、その行動の内容があまりにもひどいものであったからです。今まで自分は曲がりなりにも人並みの人生を送り、他人にはあまり迷惑をかけずに生きてきたと思っていました。ところが、考えれば考えるほど、まともな人生どころか、他人に迷惑をかけっぱなしの人生であることに気づきました。するとなんと情けないことだろう、何とかしなければと言う気持が湧き上がってきて、今までの人生には何が足りなかったのか、どう生きていけばよいのか考えるようになり、見つけ出した答えを帰ったら試してみたいと思うようになりました。あの患者様もこんな体験をされたのではないかと思いました。
 
 私は作業療法士としてデイケアを担当しているので、集中内観から帰ると、早速デイケアプログラムに日常内観を導入しました。週に1回、1時間、屏風の中でその1週間を感謝の気持ちをこめて振り返ります。残り1時間は振り返りを皆の前で発表する座談会を行います。開始当初は飲酒しながら通所される方、断酒していても他患やスタッフとのトラブルが耐えない方など問題行動が多く、スタッフもストレスが耐えない日々を送っていました。現在は試行回数も62回に達しました。開始当初こそ反発はありましたが、今では、日常内観に対し積極的に取り組むようになりました。結果、「腹は立つが起こっても損をするだけ。昔だったら飲んでいた。」「他人に迷惑をかけずに生きていかなければ。」と発言する姿もみられるようになりました。このように、感情のコントロールができるようになり、考え方や行動にも変化が見られるようになったことで問題行動が激減し、断酒者も増加してきました。また、スタッフも共に振り返りを行っているので、スタッフにも同じような効果が見られ、メンバー、スタッフ間の関係が以前と比較すると良好になっています。
 
 内観をきっかけに断酒された方を見て内観に興味を持ち、集中内観を体験してデイケアプログラムに内観を導入し、その結果を見て内観は人間として成長できるきっかけとなるものであることがよく分かりました。人間として人間らしく生きている人の周りには、自然に人が集まってくる、集まっているように感じます。これは全ての職種に言えることだと思うのですが、そういった人との繋がりは作業療法でもとても大切になってくると思います。患者様との関係が良好であればあるほど治療効果は高まってくると思います。
 
 私が内観を体験してよかったと思うことは、自分がどういう人間であるか少なくとも内観を体験する前よりは知ることができたこと。そのことにより自己中心的な自分の言動や行為にブレーキがかかるようになった気がします。そのような行為や言動があっても自分を振り返る習慣がついたような気もします。しかし集中内観から時間が経っているので、段々とそのような気持ちを忘れているような気もします。人生が終わるまでに少なくともあと2回は集中内観に行きたいと思っています。内観っていいですよ。